
重量鳶とはどんな仕事か
重量鳶は、工場や商業施設、プラントなどで使われる大型機械や設備を運搬し、据え付けや解体を行う専門職です。高所での作業が多い鳶職の中でも、とくに重量物を扱うため、高い技術力と安全意識が求められます。クレーンや玉掛け、フォークリフトなどの重機オペレーターと連携しながら、限られたスペースの中でミリ単位の調整を行うことも珍しくありません。
重量鳶の仕事は、新築工事だけでなく、既存建物の設備入れ替えやメンテナンス工事にも関わります。工場ラインの更新、空調設備やボイラーの入れ替え、商業施設の大型看板や発電設備の設置など、活躍する現場は多岐にわたります。
一般的な鳶職との違い
一般的な鳶職は、鉄骨の組み立てや足場の組み立てなど、建物そのものの骨組みをつくる仕事が中心です。一方で重量鳶は、完成した建物の中に大型設備を搬入したり、限られた開口部から機械を入れたり出したりする作業が多いのが特徴です。建物や設備を傷つけないように、搬入ルートや吊り方を事前に細かく検討する計画力も重要になります。
また、重量鳶はクレーンやウインチなどを使って何トンもある機械を動かすため、チーム全員で声を掛け合いながら作業を進めます。段取り力やコミュニケーション力が、安全でスムーズな作業に直結する仕事だと言えます。
一日の仕事の流れのイメージ
重量鳶の一日は、朝のミーティングと安全確認から始まります。その日の作業内容や危険ポイントを全員で共有し、必要な道具や資材を準備します。現場では、搬入ルートの養生、機械の玉掛け、クレーン合図、据え付け位置の微調整などをチームで分担して行います。作業後は片付けと翌日の段取りを確認し、日報の記入や写真記録を取ることもあります。
重量鳶の将来性が高いと言われる理由
重量鳶の将来性を考えるとき、「仕事が今後もあるのか」「収入は安定するのか」が気になるポイントだと思います。ここでは、業界全体の動きや社会の変化を踏まえて、重量鳶の需要が見込まれている理由を解説します。
インフラ老朽化にともなう更新工事
日本では、高度経済成長期に整備された工場やインフラ設備が更新時期を迎えています。老朽化した設備を安全に入れ替えるためには、既存の建物に合わせた慎重な搬出・搬入作業が欠かせません。重量鳶は、こうした更新工事において中心的な役割を担うため、今後も一定の需要が続くと考えられます。
自動化・省人化設備の導入
製造業や物流業界では、人手不足への対策として自動倉庫やロボットラインなどの自動化設備が導入されています。これらの設備は大型で重量もあるため、設置には専門的なノウハウが必要です。新しい設備が増えれば増えるほど、その搬入と据え付けを任される重量鳶の出番も増えていきます。
機械化してもなくなりにくい専門職
建設業界では機械化やプレハブ化が進んでいますが、狭い現場や複雑な条件の中で重量物を安全に動かす作業は、まだまだ人の判断や経験が欠かせません。図面通りにいかない現場の状況を読み取り、その場で最適な方法を選ぶ力は、機械だけでは代替しにくいスキルです。そのため重量鳶は、長期的に見ても簡単にはなくなりにくい仕事だと考えられます。
重量鳶として長く活躍するために必要なこと
重量鳶は将来性があるとはいえ、ただ現場に出ているだけで自動的にキャリアアップできるわけではありません。体力面のケアや資格取得、働き方の工夫など、自分からキャリアをつくっていく意識も大切です。
資格取得でできる仕事の幅を広げる
重量鳶の現場では、玉掛け技能講習やクレーン、フォークリフト、高所作業車など、さまざまな資格が活かせます。資格を持っていると任される仕事が増え、現場での立場や収入にもつながりやすくなります。未経験からスタートする場合も、まずは玉掛けや小型移動式クレーンなど、取りやすい資格から少しずつステップアップしていくと良いでしょう。
安全への意識と体調管理
重量鳶は、ちょっとした気の緩みが大きな事故につながりかねない仕事です。安全帯やヘルメットの着用、指差し呼称、事前ミーティングなど、基本的な安全ルールを守る姿勢が何より重要です。同時に、長く続けるためには体調管理も欠かせません。十分な睡眠、バランスの良い食事、無理をしすぎない働き方を意識することで、ケガや体の不調を防ぎやすくなります。
キャリアパスの例
現場作業に慣れてくると、段取りを組むリーダーや現場監督のような立場を目指すこともできます。工事全体のスケジュールや人員配置、重機の手配などを任されるようになれば、体を動かす仕事だけでなく、マネジメントのスキルも身につきます。将来的には、経験を活かして独立し、仕事を受注する側に回る道を選ぶ人もいます。
重量鳶の将来性を踏まえた仕事選びのポイント
最後に、重量鳶の仕事に興味がある方が、職場選びでチェックしておきたいポイントをまとめます。将来性がある仕事とはいえ、企業や現場によって働き方はさまざまです。自分に合った環境を選ぶことで、より長く安心して働きやすくなります。
教育体制やサポートの有無
未経験から重量鳶を目指す場合は、とくに教育体制が整っているかどうかが大切です。先輩がマンツーマンで教えてくれるのか、資格取得の費用をサポートしてくれるのかなどを確認しておくと安心です。安全教育に力を入れている会社は、長期的に働きやすい傾向があります。
待遇・働き方・将来イメージ
基本給や手当だけでなく、残業時間や休日、出張の頻度などもチェックしたいポイントです。また、数年後・十数年後にどのような立場で働けるのか、キャリアステップのイメージを確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。面接時に「どのような人が現場リーダーになっていますか」「どんな資格を取る人が多いですか」などを質問してみるのもおすすめです。
自分に合っているかを見極める
重量鳶は、体を動かすのが好きな方や、チームで協力して一つのものをつくり上げるのが好きな方に向いている仕事です。高所や重量物を扱う緊張感はありますが、その分、設備が無事に据え付いたときの達成感も大きくなります。見学や体験入社の機会があれば、実際の現場の雰囲気を自分の目で確かめてみるとイメージがつかみやすいでしょう。
